トゥー・ブラザーズ
【プロローグと感想】
アンコールワットの遺跡近くで生まれた
二頭のトラの兄弟、クマルとサンガ。
クマルは活発な兄で、弟サンガはちょっと気弱。
優しい母と強い父に守られて幸せに暮らしていたが、
遺跡を求めてやってきた人間によって親を失ってしまう。
兄クマルは、伝説のハンター、エイダンに、
弟サンガはラウールという少年に拾われる。
別れ別れになった兄弟はそれぞれが数奇な運命をたどり、
あることで皮肉な再会を遂げるのだが.......。
********************************************************
毎年夏に行われている「東京新聞」主催の“東京ドリームアカデミア”。
その中の“映画アカデミア”に参加できることになり、
上映される映画がこの「トゥー・ブラザーズ」だった。
本編終了後に、日本ヘラルド宣伝プロデューサーの方の宣伝裏話や
野生生物保全論研究会 トラ保護基金の方のトラ保護活動のお話なども
用意されていて、なかなか興味深いイベント。
配給会社の日本ヘラルド試写室で鑑賞したのだけど、
何度か試写会は行ってるけど、「試写室」での鑑賞って初めて。
前の人の頭が気にならないくらい急な傾斜で、
音響設備はもちろん、シートだってフカフカだった♪
滅多に体験できない空間で映画を鑑賞してしまった。
この作品、宣伝プロデューサーの方も講演の際におっしゃってたのだけど
日本の観客向けには、子供と子トラを全面に出した宣伝をされているようで、
私も劇場の予告を初めて観た時や、劇場に設置されているぬいぐるみなど見て
「子供向けのファンタジーっぽいお話」っていうイメージがあったので
悪いけど、“お金払って観るリスト”の中には入ってなかった(^^;
だから試写会付きのこういうイベントに応募したってのもある。
でも、そういう先入観は間違ってたことを実感。
トラと人間の無理のない共演、カンボジアの遺跡などの風景の美しさ
そして何より、トラのしなやかな美しさに釘付けになってしまったのだ。
決して子供向け映画ではない、大人も鑑賞しうる、
いや、すべての年代に観てもらいたい作品。
語られるテーマは人間のエゴによって引き裂かれる兄弟の悲劇。
上手く共存するためには、お互い超えてはならない一線がある。
そこをどうやってクリアするか、ジャン=ジャック・アノー監督は
厳しい中にも暖かい視線でこの二頭の兄弟トラの物語を描いている。
動物と子供が出てくる作品は、一般的に当たると言われるけれど
それ以前にやはり、撮影自体が困難を極める。
この作品もやはりそうならしく、特にトラという非常に危険な猛獣なので、
撮影には細心の注意が払われ、殆どのシーンは人間とトラと別々に撮影、
トラを放して撮影する時には、逆に人間達がケージの中に入ったりしたそうだ。
「グラディエーター」でラッセル・クロウとトラの格闘シーンに関わった
トレーナー、ティエリー・ポルティエが30頭のトラを用意して
各シーン毎に「演じることのできる」トラをキャスティング。
もちろん、動物なので望み通りの演技をしてくれるまで
根気よくフィルムは廻し続けたのだそうだ。
お陰で、子トラ時代から成長するまで本当に自然な行動が映像化されている。
まるでストーリー付きのドキュメンタリー映画の様。
子トラ時代のコミカルな動きは本当に必見。
弱虫サンガが登った木から降りる時に
足の裏についてしまった樹液が糊代わりになり
落葉が足の裏に付いてしまい、
取りたくて前足をブルブルさせるシーンは本当に愛らしい。
この1920年代以降も様々な理由により、乱獲されるトラ達。
今はたったの5000頭しか野生のトラは生息していないんだそうだ。
医学的根拠がないのに、トラの骨等が漢方薬に使用され、
その為に今でも密猟が絶えないのだとか。
密猟者達と戦う人たちを支援したりする団体としてJWCSという機関があるそうなので
興味ある方はそちらをご覧ください。
宣伝裏話として興味深かったのはポスターやチラシなどの写真の選別について。
日本はどうしても、キャラクター文化なせいもあり、
ちょっと「幼い」感じがウケるらしい。
この作品はフランス映画なので、フランスで公開された時のポスターが
↓これ。成長した二頭のトラのアップでかなり大人っぽい。
写真の使い方で受ける印象が全く違う(^^;
ちなみに、ブログに使用したポスターは多分、アメリカ版。
どういう内容かを損なわず、私としては一番いいかなと思う。
ただ、ちょっと「ありふれた」感はあるかもしれない。
確かにフランス版のポスターはインパクトあるし、カッコいいけど
これでは日本の観客は観ようと思わないだろうな〜。
宣伝担当の方もそうおっしゃってましたけど(苦笑)
先にも書いたけど、あまりに「お子様向け」っぽくしても
私みたいなヒネクレものは食指が動かなかったりして(^^;、難しいですね。
余談ですが、エイダンの好物で常に携帯してて
クマルも好物になるキャンディー。食べてみたい。(笑)
【キャスト】
伝説のハンター、エイダン・マクローリー役は、
ガイ・ピアース。
11歳の頃からアマチュア劇団に所属、
ボディビルの地元コンテストに優勝したりしつつ、
18歳の時点ではオーストラリアのティーンアイドルに。
歌、ギター、サックス、ピアノの演奏も出来、作曲もしている。
そのうち数曲は自身も出演している
「Hunting」(91年)のサントラに納められているとか。
注目されたのは「プリシラ」のドラッグクイーン役から。
さらに「L.A.コンフィデンシャル」に出演、
ケビン・スペイシー、ラッセル・クロウらと共演を果たす。
「メメント」で全身タトゥーだらけの記憶が持続しない男を演じ、好評を得る。
「モンテ・クリスト伯」「タイムマシーン」等に出演。
結果的に兄弟のトラを離ればなれにしてしまう原因を作った男、
エイダンを嫌みのない演技で好演。
この役は、監督であるジャン=ジャック・アノー自身が投影されているんだとか。
作中、人間とトラが同じ画面に収まるシーンが多く見られるが
実際は、トラが非常に危険な猛獣であるため、
別々に撮影しているのは先にも書いた。
ただ一度だけ、ガイ・ピアース本人の願いで同時に撮影したシーンがある。
ラストの方でそのシーンを見る事ができる。
行政長官ユージン・ノルマンダン役は、
ジャン=クロード・ドレフェス。
「タンデム」「デリカテッセン」
「私家版」「グレースと公爵」等に出演。
舞台、テレビにも数多く出演している。
妻や息子を愛しているが、目下の心配ごとは
移籍周辺への道路建設の許可が降りるかどうか。
許可を得るために様々な工夫を凝らそうとする。
サンガと友達になる、ユージンの息子ラウール役は、
フレディー・ハイモア。
ヘレナ・ボナム・カーター出演の「Women Talking Dirty」でデビュー。
ジョニー・デップ主演の「Finding Neverland」にも出演。
もう一作ジョニー・デップと共演の
「Charlie and the Chocolate Factory」が撮影入り、来年公開予定。
既に5年の芸歴を持つ。
日本版のポスターに選ばれている、サンガと眠るシーンは
合成でも、CGでもなく実際に撮影されたものだとか。
関係ないけど、同行した友人aya(レアルマドリーのファン)は
「ラウール」にまず反応し、続いて作中の台詞「マドリード」に反応してた。(笑)
知事役は、オアィン・グエン。
「タイムマイン」に端役でスクリーンデビュー。
ちょっと、伊集院光に似ている(笑)
偉大な父親の影に悩み、超えられないでいる。
ユージンの妻、マチルド・ノルマンダン役は、
フィリッピーヌ・ルロワ=ボリュー。
父は俳優のフィリップ・ルロワ。
「さよなら夏のリセ」「赤ちゃんに乾杯!」
「悪霊」「愛するための第9章」
「ジェファーソン・イン・パリ」「宮廷料理人ヴァテール」等に出演。
舞台などでも活躍している。
サーカスでトレーナーのゼルヴィーノ役は、
ヴァンサン・スカリート。
「王は踊る」に出演、他TV等で活躍。
結構動物想いのトレーナー。
ただ、目先の欲にちょっと眩みがちなのが......。
遺跡近くの村、村長の娘ナイ=レア役は、
マイ・アン・レー。
パリ出身のベトナム系女優。
ファッションモデルなどもこなす。
そのルックスから、「Samurai」(「ラストサムライ」でない)で
日本人役(アケミ)を演じた事もある。
エイダンが密かに想いを寄せる女性を演じる。
あの強欲な村長である男の娘とは、ちょっと信じがたかったりする(苦笑)
【オフィシャルサイト】
「東京新聞」主催/“映画アカデミア”にて鑑賞。
於:日本ヘラルド試写室
↓ココにもTBしてあります。
トゥー・ブラザーズ@映画生活
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I commenti per questa nota sono chiusi.
Commenti
こんばんは。
試写でご覧になられたのですね。羨ましい~
私も楽しみにしている映画なので、エントリーの方は飛び飛びに読ませて頂きました(笑)
こちらは上映はあるのですが、いつ頃か未だ分んないのです。
それにしても、ポスターの印象というのは写真の使い方で随分違ったものになるのですね。
Scritto da: モン基地の母 | giovedì, agosto 26, 2004 12:41 AM
☆モン基地の母さん
こんばんは〜、早速コメントありがとうございます。
多分、ネタバレはしてないので大丈夫だとは思いますが、
やっぱり、まっさらな状態で作品を楽しみたいですもんね。(^^)
ぜひ、ご覧になったらTB等で感想をお聞かせください。
日本ヘラルドはこの映画を大プッシュしてるみたいで、
自社ビルにデカデカとポスターが貼ってあるのですよ〜(at 銀座)
一応9/18全国公開みたいですけどね。
これからたくさん宣伝活動してくって、担当の方も力入ってました(笑)
Scritto da: FLUFFY | giovedì, agosto 26, 2004 12:49 AM
コメント、TBありがとうございました(*^_^*)
このCM結構笑っちゃいません?(おすぎとピーコの)
それはおいといて、ほんとにトラの兄弟愛とか
アンコールの遺跡や自然、美しいですよね。
パンフレットの違い、面白かったです。
アメリカ版のパンフもほしいな~。
Scritto da: cocoa | sabato, settembre 11, 2004 10:26 AM
☆cocoaさん
こちらこそいつもどうもです。
この映画を観た時に宣伝の方が、その「おすピー」のCMについては
話しをしてました。「日本で一番有名な双子といえば!」ってノリで
(笑)私はそう言われて彼(彼女?)達だってすぐに思い浮かばなかったんですけどね(^^;
で、そのCMまだ観てないんですよ〜、観たいんですが。
Scritto da: FLUFFY | sabato, settembre 11, 2004 08:23 PM
CM最近結構やってるので
きっと見られると思いますよ♪
なんか、何バージョンかある気がします。
(2、3種類見た気がする・・)
映画関連で有名な双子といえば、
やっぱり彼ら(彼女ら?)なんでしょうね(^-^)
Scritto da: cocoa | sabato, settembre 11, 2004 09:44 PM
日本とあちらの宣伝の仕方って、
ポスターをみただけでぜんぜん違いますね。
日本はほんと、子供うけしそうな画像だし。
事実、私のよくいくシネコンでは
子供向けのためか!?
吹き替え版が主流になってました(苦笑)
とーぜん私は遠征して字幕版をみたのですが。
でも、子供むけのために子供と子トラって・・・
ちょとこの作品のイメージではないですよね!?
大人が見ても満足する作品でしたのも。
かえて子供にはトラのセリフがなくてたいくつでは???
と思うのですが~~~・・・
Scritto da: えふ | domenica, settembre 19, 2004 08:55 PM
☆えふさん
「ぼくが守ってあげる」というキャッチコピー、
ラストを観ればなるほどと思えますけどね、
あのチラシとあのコピーでは、もっと子供が活躍すると思う人
多いだろうなって思いました。
シネコンは近所にないのもあるし、子供が多いっていう印象があるので、実はあまり行きません。(もっぱら銀座で鑑賞します。)
この映画は、子供向けでは全然ないですよね。
逆にそっちを強調してしまって、損してる部分ってあるような気がするんですけどねえ。
Scritto da: FLUFFY | lunedì, settembre 20, 2004 01:56 AM
FLUFFYさん、こんばんは~★
ご無沙汰してしまいました^^;
この作品の宣伝にはそういう裏があったんですねー。ポスターだけじゃなくて、当時劇場予告版などでも少年を強調してましたよね。私は動物、子供、どちらも弱いから「観たいけど号泣したら恥ずかしいな^^;」って思ってたぐらいです(笑)
でも、見てみたらビックリです。本当に奥が深いし、トラの迫力は物凄いし、映像はキレイだし・・と大人も充分に楽しめますよね。あっ、子供も興味深く見てましたよ^^
>いや、すべての年代に観てもらいたい作品。
ホント、その通りですね^^
TBさせて頂きました!
Scritto da: てるみ | giovedì, febbraio 17, 2005 09:20 PM
☆てるみさん
こういう物語って、後味悪く終わることが多いのに
この作品は満足でした。
少年を強調した宣伝って
「マスター・アンド・コマンダー」的な感じしますね。(^。^;)
シビアな面もあるけど基本的に優しい視点で描いてますよね。
Scritto da: FLUFFY | sabato, febbraio 19, 2005 05:34 PM
私もこの作品、
お金払って観るつもりもなく、
試写会応募するまでにも至らず、
レンタルさえもしないつもりだったのですが、
丁度空きがあって借りて見てみたら・・・「見てヨカッター!」と考えが一変してしまいました。
可愛い&お涙頂戴的な作品だけじゃなくって、ストーリーが良く出来ていた感じもしたので、もーたまらなかったです!
それにしても、興味深いイベント付き試写会ですね!(今更ながら、私も応募したかったなぁ~)
Scritto da: aju | domenica, febbraio 20, 2005 10:08 PM
☆ajuさん
なんとなく、劇場公開時に観た人って
あんまりいないような気がするんですよね・・・。
間違いなく私も「食わず嫌い」でやり過ごそうとしてましたから。
でも本当に、観てよかったなと思える作品です。
だからちょっと損してる気がするんですよね。
別に正統派で宣伝してもよかったかなと思ったり。
Scritto da: FLUFFY | domenica, febbraio 20, 2005 11:41 PM
クマルは活発な兄で、弟サンガはちょっと気弱。っていうキャラ設定に萌えます。この作品は動物が好きな方だけでなく、BL好きにもファンができるのでは!?
JWCSの募金ですが、トラの待ち受け画像を購入するとそれが募金につながるサイトもありました。今なら、バックも抽選でもらえるみたいです。http://machiukeru.jp/
Scritto da: ゆりえ | martedì, ottobre 14, 2008 11:11 AM